「黒猫」で、今日も田谷さんがホットコーヒーを頼んだ。
「いやー、暑いよねぇ。でも頼んじゃうのはホットコーヒーってね」
「……そうですね」
私はカウンターの中から、ぼんやり返事をした。
「元気無いなぁ〜。深雪ちゃん、大丈夫なの?」
田谷さんの言葉に、ハッとする。
「えっ、大丈夫ですよ!元気です!」
「本当にー?」
田谷さんが心配そうにしている。
うー、ごめんなさい。
心の中で謝る。
カランコロン。
入り口の扉が開いた。
「いらっしゃいませ」
私はカウンターから接客に向かう。
中に入ってきたお客様を見て、固まってしまった。
「あ!武岡さん!!」
私の背中から、田谷さんの嬉しそうな声が聞こえてくる。
……優大くんが、私の目を見ている。
思わず目をそらした。
「武岡さん、全然来なかったじゃない!久しぶり〜」
田谷さんが優大くんに近寄る。
ふと、私を見た田谷さんは、
「深雪ちゃん?顔色悪いよ?」
と、言った。