「あのカップル、ずっと男の子が話してるよね」
幸絵さんが小声で話しかけてきた。
「ずっと話を聞いてるあの女の子、すごいよね。ちゃんと明るく笑顔で頷いててさー、楽しそうにしてるじゃない?」

「そうですね、楽しそうに見えます」

「でもさー、あれ。絶対ストレスたまるよ。たまには女の子の話も聞いてあげればいいのに。私だったら話したくてうずうずして、爆発するね」
幸絵さんはそう言うと、レジのほうへ行ってしまった。



カップルが何を話しているのかは分からないけれど、私には本当に楽しそうに見えた。

女の子のあの笑い声がずっと続いたらいいなぁと思う。





「黒猫」の仕事が終わって。

私はひとり暮らしの部屋まで帰って来た。


晩ごはんを食べてからメイクを落とし、お風呂に入った。



お風呂から上がってくると、充電しておいたスマートフォンを持つ。


優大くんからのメッセージは届いていない。