『こんばんは、「シー・ファンキーズ」の優大です』
テレビの中。
優大くんはニッコリ挨拶をした。
「『シー・ファンキーズ』って……」
芸能人に疎い私でも名前は知っている。
大人気のダンスボーカルグループだ。
だけど知っているのは、それだけ。
どんな曲を歌っていて、メンバーが誰なのか、全然知らない。
「えっと……、深雪さん」
優大くんが咳払いをした。
「なんで?」
私は優大くんの顔を見た。
すごく困った顔をしているけれど、テレビ画面に映る彼と同じ人物だ。
優大くんは、
「ごめん」
と言ってから、
「……もう、やだ?」
と聞いてきた。
私は首を振る。
嫌なわけ、ない。
でも。
「言わないつもりだったんですか?」
私に、自分は芸能人だって。
隠されているみたいで、信用されていないみたいで、寂しい。
「言うつもり、でした。でも……」
優大くんの表情が、どんどんしょんぼりしていくように見えた。
「……オレ、心地良かったんです。『シー・ファンキーズ』の優大じゃなくて、深雪さんの前では武岡優大に戻れた気がして」