苺にはもうなれない


薫おじさんが駐車場から歩いてくるのが見えた。


「やー、ごめん、ごめん。車から降りるタイミングで電話がかかってきて」

薫おじさんが私に、「よっ」と声をかけてくれる。


「じゃあ、行きますか!」
冴子さんが入り口に向かって歩き出す。

何故か1番張り切っているように見える。

私も薫おじさんと、冴子さんの後に続いた。












「もう、何が何やら……」
試着室からやっと解放された夕方。

着替え過ぎて疲れてしまった。



「深雪ちゃん、これくらいでへばってどうするの!洋服は無事に買えたけど、メイクは?鞄は?靴は?アクセサリーは?」

冴子さんが追い討ちをかける。

「メイクは……自信ないです。鞄は……何かあるかなぁ?靴は、買わないと無いかもです。アクセサリーに至っては考えてもいませんでしたー」

「そうでしょうとも。じゃあ、とりあえず靴ね!買った洋服に合う靴、見に行くわよ!」


「冴ちゃん、深雪ちゃんを少し休ませてあげたほうがいいかも」
薫おじさんが助け舟を出してくれる。


「薫おじさん……、神……」


「もー!薫ちゃんは深雪ちゃんに甘いんだから!」
冴子さんは文句を言いつつ、テキパキと休憩が出来そうなカフェを見つけて、連れて行ってくれた。