「あぁ、はい。コースはバラバラなんですけど、日課で」

「……あの、私なんかのせいで走れませんでしたよね?」

「え?」

「運動してたのに、引き止めてしまって。風邪とか、引かないようにしてください」


武岡さんは少し考える仕草をした。


「小森さん」

「はい?」


「オレ、今日は偶然に公園で走っていて良かったって思っています。小森さんと会えて、話が聞けて、良かったです」


「えっ……?」



武岡さんを思わず見てしまう。

真っ直ぐに前を見て歩く武岡さん。

横顔がキレイ。



私の心臓はこっそり、ドキドキしている。




『小森さんと会えて、話が聞けて、良かったです』



嬉しい。

そんなふうに思ってもらえるなんて。




胸がいっぱいで。

何も言えなくなる。




「……ここ、ですか?マンションって」
武岡さんの足が止まる。


ハッと気づくと、見慣れた外観。


もうマンションに着いてしまった。



……残念だ。