嘘を見抜かれている、と思った。
武岡さんに嘘は通じない。
そんな気がする。
「……本当は」
私は観念した。
「本当は、元気じゃない、です」
観念するのは2度目だな、と頭のすみっこで思う。
「話して楽になるなら、聞きますよ」
心配そうな顔で、武岡さんが言う。
「……私にはもう、家族って言える人がいないんだなぁって思って」
私はぽつりと話し始めた。
武岡さんは黙って聞いている。
「高校生の時に出て行った父は生きているんですけど、母も祖母も他界してて。なんとなく孤独を感じてしまって。……もう、大人なのに、変ですよね」
私は笑顔を作った。
「時々すごく恋しくなるんです。母や、祖母や、……父のことでさえ。私にとっては家族だから。でも、さっき父と電話して思い知らされたんです」
……あっ、やばい。
声が震えてきた。
そう思っても、話さずにはいられなかった。
「あぁ、もう父にとっては、私は家族じゃないんだなって。もう、必要とされていないんだなぁって」



