「あ、はい。母の兄です。家族は……」

私の声が少し小さくなる。


「……いいよ、無理に聞かないよ。ごめんね、おばあちゃんが悪かったよ」

花屋のおばあちゃんは察してくれたらしく、すぐに話題を変えた。





しばらくおばあちゃんと雑談を楽しんで、私は店に戻るために花屋を後にした。







帰り道。


ぼんやりと歩いている。



……家族。


いるには、いるけど……。










……ハッ!!





考え事をしていたら。


「黒猫」を通り過ぎていて。



私は商店街のアーケードの中を歩いていた。






「やばい、戻らなくちゃ」


回れ右をしたら。




見覚えのある男性が向こうから歩いてくる。






「……武岡さん?」




思わず声をかけてしまった。



武岡さんは私に気づき、耳にさしていたイヤホンを取った。



「小森さん、こんにちは」

今日も相変わらずキャップを被っている。



「こんにちは。外でばったり会うの、初めてですね」