「もう秋になってもいい頃なのに、今日も暑いねー!」
カランコロンと音を立ててお店の扉が開き、田谷さんがやって来た。
「田谷さん、いらっしゃいませ」
私は田谷さんをいつものカウンター席にご案内する。
「深雪ちゃん、いつもの!」
「はい。ホットコーヒー、おひとつ」
私は田谷さんに確認するように言いながら、注文表に書きこむ。
「暑い日だから、アイスコーヒーにしたいって思うんだよ?でもここのホットコーヒーが好きなんだよなぁ」
そう笑って、田谷さんは持っていたパズルの雑誌を開いた。
田谷さんにホットコーヒーをお出しすると、またカランコロンとお店の扉が開いた。
「いらっしゃいませ」
扉のほうを見ると、そこには「キャップさん」が立っていた。
今日はキャップを被ってない。
代わりに眼鏡をかけていた。
眼鏡もオシャレだなぁ。
黒縁の、どこにでもありそうな眼鏡だけど。
「キャップさん」によく似合う。