だから。
こんなに泣いていても。
優大は決して私を、抱きしめて慰めたりなんかしない。
頭のてっぺんを撫でてくれるだけ。
それが、私達の距離。
私達、幼馴染みの距離。
「苺」にはもう、なれない。
絶対に。
ずっと優大の「苺」になりたくて必死だったのになぁ。
きっと。
優大の結婚相手の魅力は、私には分からないんだろう。
優大の初恋相手の時みたいに。
「タオルか何か、目ぇ冷やすもの持ってくるわ」
優大はそう言って、私から離れた。
泣いている私をひとりにするつもりで、気遣ってくれたんだと分かる。
部屋から優大が出て行くのを、開いたままのドアから見ていた。
「苺」の意味なんて、分からない。
きっと、ずっと一生。
だけど「苺」には魅力がたくさんあるって、実は知っている気もする。
「苺」になりたかったな。
……そう思って私は階段を下りる優大の広い背中を見つめていた。
知らない背中に見えて、また泣いてしまった。