鈴井くんはメニューに目を通すことなく、
「コーヒー、ホットで2つ」
と言った。


え?


私は思わず鈴井くんを見つめた。



「あ、他のものが良かった?」

鈴井くんはニコッとしている。



あ、そうか。
私がメニューに迷ってると思ったのかな?

だからコーヒーを代わりに注文したのかな?

優しいんだね、鈴井くん。






運ばれてきたホットコーヒーを飲みながら、私は鈴井くんの話を聞いていた。


うんと面白くて。

オチに絶対笑ってしまう。



なんて話し上手なんだろう。


分からないことには、さり気なく説明をしてくれる。

それが押しつけがましくなくて。



あっという間に何時間も経っていた。






帰り際。

「また会って話そうよ」

鈴井くんは私にスマートフォンを見せた。

「連絡先、聞いてもいい?」



嬉しくて、鞄からスマートフォンを取り出す手が震えていた。