誰かに優大の気持ちを奪われるのは、もう嫌だ。
どれだけのお金と時間と労力が必要だとしても、私は優大の隣に立つ女の子でいたい。
私は伏せておいたスマートフォンを手に取り、優大に返事を送った。
『お祝いメッセージをありがとう!
32歳を楽しみます。
優大も楽しい毎日を送ってね。
またメッセージ送ります』
本当はもっと書きたいことがたくさんあるけれど、これくらいの文章で送る。
サクッと読めるほうが、きっと重くない。
「私達、32歳だよぅー」
スマートフォンの向こうにいる、優大に向けて呟く。
「長い付き合いだよね」
優大と初めて会ったのは、幼稚園の入園式だった。
近所に住んでいるから母親同士が挨拶をしていた。
『真希、優大くんっていうんやって』
お母さんがそう言って、私と優大に握手をさせた。
『優大くん、真希と仲良くしてねぇ』
優大は握手した手を見つめて、
『うん』
と小さく言った。



