美波さんの隣にしゃがみ込み、僕はゆったりと相槌を打った。
話を聞こうとしている意思を受け取って安堵したのか、小さな肩から力が抜ける。


「先生にも、お母さんにも、謝って仲直りしなさいって言われちゃった。ユイ、謝らなきゃだめ?」


怒っていい、と助言した僕に報告しに来ただけかと思っていたけれど、どうやら更なる助言を求めているようだ。少し不安げにこちらを窺っている。

僕より先に口を開いたのは美波さんだった。


「うーん、そうだねえ……お互いにごめんなさいって言って、仲直りした方が……」

「謝らなくていい」


彼女の意見を投げ捨て、僕はそう言い切った。


「君は何も悪くない。悪いことはしてない。だから、相手が謝ってくるのを待てばいい」

「わ、航先輩……」


美波さんのやや慌てた声が聞こえたけれど、発言を撤回する気はなかった。
大体、自分が悪いと思ってもいないのに謝罪をするなんて、それこそ意味のない行為だと思う。


「もー、それは航先輩の持論じゃないですか! ユイちゃんは小学生なんですから、きちんと道徳的なことを……」

「お兄ちゃん、わたるっていうの?」