虹色のキャンバスに白い虹を描こう



僕の申し出に、近江さんが僅かに目を見開いた。それからすぐに穏やかな微笑を浮かべると、彼は手に持っていた高価な機器をすんなり僕に明け渡す。

軽く会釈をして受け取り、清の方へと足を向けた。

彼女がいま漕いでいるブランコの隣に、もう一つ。空いているブランコに座って、カメラを構える。


「あー、航先輩! えっ、何ですか? 何で撮ってるんですかー!?」


前へ、後ろへ揺れるたびに、清の声が遠ざかる。かなり全力で漕いでいたらしく、彼女は隣に来た僕を見て止まろうとするも、なかなかに時間がかかりそうだった。


「航先輩、あの! カメラ! 何で……」

「いいからそのまま漕いでて」


状況が把握できずに若干慌てている清を、ぱしゃりとカメラに収めた。ちょっと! と抗議じみた声が彼女から上がる。
それでも数回シャッターを切っていると、照れ臭さもあるのか、観念したように笑い始めた。

やっぱり清は、青空の下で笑っているのが一番似合う。
脚を曲げてからぐんと伸ばし、空中に飛び出していく。その一連の流れを何度も目に焼き付けた。

風が強く吹く。彼女の髪がなびく。もう一度、カメラを構えた。


「私、航先輩に――」