「おれはシャツが乾くまでここで寝てるから、るなこは教室に戻りな」

「え……」

「大事な初日の授業でしょ。頑張ってね」


にこ、と控えめな笑顔が私を送り出した。




仕切りのカーテンを閉めたあとで、「るなこ」と再び声がかかる。



「なに……?」

「次会うときまでに、おれの名前覚えてきてよ」

「え……? 黒土くんでしょ?」

「下の名前もね。……じゃあ、おやすみ」


それきり何も聞こえなかった。




――怜悧くんはこの学校にいるけれど、ムリ?

どういうことだろう。


いろいろなことが起こって、頭のなかが混乱してる。



ベッドに向かって「おやすみ」と、かなり遅れた返事をすると、私は保健室をあとにした。