放課後、二人きりの教室。 なかなかロマンチックな響きだけれど。 対して、会話の中身はロマンチックとは程遠い。 「ねー、羽結(はゆ)いい加減こっち向いてくんない」 「無理です」 「照れてるの?最高に愛おしい」 今まで話したこともないのに、何故か私の前の席に座るこの男は、五月 宙(さつき そら)先輩。 彼は机一つ挟んだ距離でさっきからずっと私を見つめている。 何が楽しくてそんな事をしているのだろう。