それから4月になり、桜が満開になってきた頃。私、林田 美空は入学式を迎えた。
「美空ちゃん、行くよ」
「うんっ……い、伊蕗くん」
カッターシャツに深緑のセーター、中には紺色のネクタイをしてネクタイと同じ紺色のズボンを履いた男の子は坂下伊蕗くん。
坂下さんの息子さんで、高校三年生だ。
「危ないからこっちおいで」
伊蕗くんは、無口でクールだけど優しい。
突然来た私に優しくしてくれる。とてもいい人だ。
「美空ちゃん、やっぱり手繋ご」
「……ぇ」
「ひと、増えてきたから」
そう伊蕗くんは言うと、手を繋ぎ歩き出した。