「まぁ、そう言わないでくれよ……彼とはイギリスのビジネススクールで出会ったんだが、とても優秀でね。パパは会社の方針で、半年間の研修留学に行っていたんだが、正直なところ、講習の内容についていくのがやっとだった」
「ふーん……そういえば、パパの若いころの話聞くの初めてかも」
「そういえばそうだね。……そんな中、彼は独学で身に着けた英語を自在に使って、現地のエリートビジネスマンたちと互角以上に渡り合っていたんだ」
「へぇ、なんかすごい人っぽいじゃん」
そんな人と知り合いだったなんて、知らなかった……。
「そもそも、アジア人のしかも学生が通うようなスクールじゃないから、はじめはあからさまに馬鹿にされていたんだ。だけどある日、講習の中でディベートをする時間があってね。彼がしゃべり始めたら、こけ落とそうとしていたイギリス人たちが、目をまん丸にして驚いたんだ。彼の知識と考え方、主張するポイント、それに話術と、すべてが超一流でね。パパも同じ日本人として、鼻が高かったもんさ」
「あ、また自分は何もしてないのに自慢っぽく言ってる」
「ま! まぁ……そ、それで、講習のあとに話しかけてみたら、何のことはない普通の好青年でね。周りに日本人が全然いなかったこともあって、すぐに意気投合して仲良くなったのさ」
父は、「はははっ」と自慢げに笑った。



