翌朝の登校時間中、ミハルは大好きなアイドルの歌を口ずさんでいた。


カバンを持っている両手は自然と振り付けを踊ってしまう。


やっぱりアイドルがいいかな。


可愛い衣装を着てステージに立つのって素敵。


上機嫌でその場でターンをしてみたとき、狭い路地にギラリと光る2つの目玉を見つけてミハルは小さく悲鳴をあげていた。


思わずその場に立ち止まって暗い路地へ視線を向ける。


すると暗闇の空気が動き、一人の老婆が姿を現した。


腰が曲がっている小さな老婆は紺色の服を着ていて、それが暗闇と同化してしまい、目玉だけ浮かんでいるように見えたみたいだ。


目玉の正体がわかったミハルはホッと大きくため息を吐き出した。


あぁ、びっくりした。


「そこのお嬢さん。ちょっと道をお尋ねしたいんじゃがの」


老婆がしわがれた声で言った。


「どこへ行きたいんですか?」


「孫が働いている市立図書館へ行きたいんじゃ」


「市立図書館なら、この大通りを真っ直ぐ行って、右手にありますよ。歩いて5分くらいだから、お婆ちゃんならもう少しかかるかもしれません。あと、図書館が開く時間は10時だから、まだ少し早いかもしれないですよ? 図書館の前にはベンチが設置されているし、公園もあるけど、オススメは隣の喫茶店です。朝早くから開いているし、紅茶がとっても美味しいですよ!」


ミハルは自分の知っている情報をできるだけ詳しく教えてあげた。