ミハルはムッと頬を膨らませて「するに決まってるでしょう!?」と言い残すと、トイレに逃げていってしまった。


残されたマイコとチアキの2人は顔を見合わせてため息を吐き出す。


中学2年生ともなると色々なものが見えてきて、夢が叶うかどうかもなんとなくわかってきてしまう。


それでも挑戦しようとしているミハルの姿勢はすごいと思う。


ただ、夢が定まらないのだ。


つきさっきまでアイドルになるために踊り場で練習していたのに、ミハルはすっかりそのことを忘れてしまっている。


「一ヶ月前には小説家になるって言って、物語を書いてたよね」


2人はC組の教室へ向かって歩きながら会話を続ける。


「うん。あれも結局未完結のままでしょう?」


「だよね。その前は漫画家。その前は映画監督。ミハルの夢はどんどん変わって、一体なにになりたいのか全然わかんない」


マイコはそう言うとお手上げと言う様子で肩をすくめた。


「でもさ、あれでひとつでも夢が叶ったらすごいよね」


チアキはミハルの夢が叶うなんて信じていない様子で言う。


マイコはそれを聞いて笑いだした。


「ほんとだね」


2人はクスクスと笑いあい、C組の教室へと消えていったのだった。