「夢はちゃんとひとつに決めた方がいいよ?」


マイコに言われて、ミハルは思わず睨みつける。


「ひとつに決めてそれが叶わなかったらどうするの?」


「でも、あれもこれも追いかけたんじゃ、なにも叶わないかもしれないじゃない?」


「そうそう! 二兎を追うものは一兎を得ずって言うし」


チアキが言ったことわざにミハルはキョトンとした表情になって「なにそれ?」と、首を傾げた。


チアキとマイコの2人は顔を見合わせて呆れたため息を吐き出す。


「ミハルの夢、それだけじゃないでしょう?」


マイコに言われて、ミハルは胸を張って大きく頷いた。


「甘い物が好きだから、パティシエとかもいいかもって思ってるよ」


ミハルはスイーツが大好きだ。


特に色々な種類があって、見た目も可愛いケーキが大好き。


「パティシエになったら毎日でもケーキが食べられるし、そんな素敵な仕事他にはないよ!」


ミハルはそう言いながら口の中に唾が溜まっていくのを感じていた。


頭の中には色とりどりのケーキが浮かんできていて、そのどれもを食べてみたかった。


「ミハルってば、パティシエになると自分で作らないといけないんだよ? ケーキ、つくったことあるの?」


チアキに冷静なツッコミを入れられてミハルは口ごもった。


「それは、まだだけど。でも時間はまだまだたっぷりあるんだから、これから作り始めれば間に合うよ!」


「確かに時間はあるけど、ミハル本当にケーキ作りなんてするの?」


マイコは疑わしそうな視線をミハルへ向けている。