ミハルは踊り場の鏡の前で右手をマイクを持つように軽く握り、足で左右にステップを踏んで、鼻でハミングをした。


鏡の中のミハルもそれと同じように軽快に動いている。


「ミハル、なにしてるの?」


同じ2年C組のマイコとチアキがやってきて、不思議そうに声をかけた。


「見てわからない? 練習だよ」


「練習?」


マイコが首をかしげると、短い髪の毛がサラリと頬にかかった。


「体育でダンスとかあったっけ?」


メガネでお下げ髪のチアキが呟く。


「体育の授業なんかじゃないよ。私は将来アイドルになるんだから、それの練習!」


ミハルはステップをやめて2人の前で腕組みをした。


長い髪の毛はポニーテールにされていて、赤いリボンで結んである。


「あれ? ミハルの将来の夢ってモデルじゃなかった?」


「え? 女優さんでしょう?」


マイコとチアキは口々に言って更に首を傾げてしまった。


「もう! そんなのどっちでも良いの! っていうか、今はアイドルも女優もモデルもする人沢山いるでしょう!?」


「それはそうだけどさ……」


ミハルの剣幕にチアキが後退りをする。