最悪な気分のまま1日を終えて家に戻ると、セイコはただいまも言わずに2階の自分の部屋へと向かった。


白とピンクを貴重にした部屋は女の子らしくて大好きだ。


ピンクの毛の長い絨毯を踏みしめて白い勉強机に向かい、一番したの大きな引き出しの奥から一冊のノートを取り出す。


それには『悪口ノート』とセイコの文字で書かれていた。


半分ほど埋まったノートを開くと、ペン立てからマジックを取って乱暴にトオコの悪口を書き始めた。


ブリッコ。


厚化粧。


ブス。


本当かどうかなんて関係なかった。


とにかく嫌だと感じた人間の悪口をなんでもかんでも書きなぐる。


そうしているとだんだん気持ちが落ち着いてきて、最後には怒りで硬直していた頬もほぐれていくのだ。


セイコがストレスを感じたときの発散方法だ。


「ふぅー」


1ページ分の悪口を書き終えた時、セイコの心は随分と軽くなっていた。


大きく息を吐き出し、誰にも見られないようにノートを引き出しの奥へと隠す。


このノートがなければ私は今ごろストレスで爆発してしまっていたかもしれない。


「セイコ、帰っているの?」


階下から母親の声が聞こえてきて、セイコは慌てて部屋を出たのだった。