翌日学校に到着したセイコはさっそく手のひらに接着剤を乗せた。


それは以前と同じようにサラサラしていて爽やかな香りがしている。


それを手になじませてからA組の教室に入り、登校してきているクラスメートたちを見回した。


トオコはまだ来ていないけれどカナはすでに来ていた。


ハンカチを手にトイレに向かおうとしているようで、入り口付近に立っていたセイコに近づいてきた。


セイコは咄嗟に右足を前に出し、足先でカナを引っ掛けてこかせていた。


カナが派手にコケた後、すぐに足を引っ込める。


「いったぁ」


顔をしかめて立ち上がりカナに手を差し出した。


「カナ大丈夫? なにかに躓いたの?」


さも自分が原因ではないというように、心配顔をつくって見せた。


セイコにこかされたと思っていたカナは怪訝そうな顔をセイコへ向けている。


それでもなにか別のものに躓いてしまったのだろうかと、周囲を確認した。


「ほら、立って」


「うん……」


首を傾げつつセイコの手を握りしめて立ち上がる。


その時、手のひらの接着剤すーっと体内へ吸収されていく感覚を覚えた。


「ありがと」


カナはぶっきらぼうに礼を言い、そのまま教室を出ていったのだった。