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トオコは元々人気者で、少し自慢話しをしていたって気にならなかった。


それなのに今はどうしてこんなにイライラしているんだろう。


自宅に戻ったセイコは大きな足音を立てながら階段を上がり、自室に入ってすぐに悪口ノートを取り出した。


最近はなぜかイライラすることが増えてきていて、ノートはもうほとんど残っていない。


マジックを掴むと乱暴に文字を書きなぐる。


最初の頃は『ブズ』とか『バカ』と言った悪口だったけれど、今では1ページいっぱいに『死ね』と書いたりしている。


それがあまり良くないことだとわかっているのにやめられない。


散々ノートに悪口を書きなぐって、1ページが真っ黒に塗りつぶされたころ、セイコは鞄の中から人間接着剤を取り出した。


これがあれば自分はどこまでも友人を増やすことができる。


トオコよりもっともっと人気ものになることができる。


接着剤の量は少ないけれど、まだ1回しか使っていないし、なくなればまた買えばいい。


そう決めると心がスッと軽くなっていくのを感じた。


いつの間にかトオコへの憧れは妬みや執着へと変化していて、セイコはそれに気がつくこともなかったのだった。