1年A組の教室内に明るい笑い声が響いて、自分の席で文庫本を読んでいたセイコは顔を上げた。


教室の中央には3人の女子生徒が固まって楽しそうに会話を弾ませている。


その中心にいるのはトオコだ。


トオコはクラスで1番綺麗でスタイルもいい。


中学1年生だとは思えないくらい、腰がくびれている。


トオコの周りにいる2人のクラスメート、ハルナとカナも中学に上がったばかりとは思えないくらいに派手な子たちだ。


この3人はA組の中で一番目立つグループだった。


セイコはしばらく3人を見つめていたが、自分にはわからないメークの話しで盛り上がっているようで、すぐにまた文庫本に視線を落とした。


セイコは静かな場所が好きだった。


静かな場所で、1人で読書がしたい。


地味な趣味だと笑われることもあるけれど、本を開けば色々な世界に飛んで行くことができるから最高なんだ。


それって現実逃避じゃない?


いつか母親に言われた言葉を思い出してしまって、本の世界に集中することができなくなったセイコは大きくため息を吐き出して文庫本を開いたまま逆さまにして机の上に置いた。


別に現実逃避なんてしていない。


みんなとおしゃべりしている時間よりも、1人の時間が好きなだけ。


それでもトオコたち3人組の楽しそうな笑い声が気になって仕方がなかった。