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自室に入って鍵をかけても、廊下からお母さんの声が聞こえてくる。


怒っているし、呆れていもいる声色だ。


ミハルは布団の中に潜り込んで両耳を塞いだ。


もうなにも聞きたくない。


もうなにも見たくない。


現実なんてもうたくさん!


みんなみんな、夢みたいに消えてなくなっちゃえばいいんだ!


怒りに任せてテーブルの上の瓶を握りしめた。


キャンディーはまだまだ沢山残っている。


老婆は1日1個だと言ったけれど、そんなことかまっていられなかった。


蓋を開けるとキャンディーの瓶を逆さまにしてそのまま口の中にザラザラと放り込む。


マスカットにイチゴにオレンジにメロン。


いろいろな味が混ざりあって、頬はとろけそうなほど美味しい。


しかしその美味しさを味わう暇もない速さで眠気を感じた。


ベッドに向かうこともできず、その場に崩れ落ちる。


夢の中にひきずりこまれていく寸前、もう二度と、現実なんかに戻ってこないんだから。


と、ミハルは呟いたのだった。