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ミハルがいくら頑張っても夢の中の自分には届かない。


夢の中の自分は二号店となる『MIHARU』をオープンし、連日ケーキの予約が殺到していた。


一番弟子だった男性に二号店の店長を任せて、自分は予約品を作り続ける。


ミハルのつくったケーキを食べた人はみんな笑顔になって、嫌なことなんて全部忘れてしまう。


まさに魔法のケーキだと呼ばれるようになっていた。


そんな夢から覚めたとき、ミハルは朝早い時間だとしてもケーキ作りを開始した。


今ならできる気がする。


誰よりも上手なケーキを焼くことができる気がする。


そんな気持ちに急かされてキッチンに立つのだ。


そしてミハルはたしかに上達していた。


今ではもうペタンコのスポンジケーキを焼くこともないし、スポンジを横にカットすることにも慣れてきた。


だけど出来上がったケーキはとても平凡で、少し料理が上手な子なら誰でも作れるような品物だった。


とてもお店に出すことはできないと、ミハル本人が見てもわかるくらいに。