さっきから頭の奥でうるさい


 食べろ…味見してみろ、と話しかける


 「はあ…っ…。は、…っぐ!」


 「痛っ!狼雅?本当に大丈夫?」


 もはや瑠香の声は聞こえない


 頭の中は瑠香から漂う香りの事でいっぱいだ


 段々自分の口が瑠香の首筋に近づく


 どんな味がするのだろうか?


 どんな力が手に入るのだろうか?


 食べたい、食べたい、食べたい


 (一口…一口だけなら…。)


 「聞いてる!?狼雅!返事して!」


 耳元で大声を上げた瑠香により

 正気を取り戻した


 「あ?儂は一体何を…?」


 「もう!何をしていたの?」


 困った顔をした瑠香


 「あ、ああ…すまぬ。」


 瑠香の肩に置いていた手をどける


 「それに…肩に息がかかって
  くすぐったかったよ?」


 少し頬を赤らめた瑠香の表情を見ると
 此方まで恥ずかしくなる


 「なっ…//そんな顔するでない!」


 儂は赤くなったであろう顔を見られたく
 なかったので瑠香を後ろに向かせ、
 背中を押した


 「もうよい!さっさと帰るがいい!」


 「え?でもいつもはもう帰るのかって
  言うのに…。」


 「今日は疲れたのじゃ!また今度にしろ!」


 (嘘じゃ、こんな小娘に気持ちを
  かき乱されるなど言語道断じゃ!)


 でなければ、さっきの匂いの持ち主と
 同類になってしまう気がした