「まぁ…所詮夢だもんね…。」


 私は再びあの祠へ足を運んだのだが
 あの犬神は居なかった


 「さてと…早く帰るか。」


 「久々に来たと思ったらもう帰るのか。
  つまらん奴じゃ…。」


 「はいはい、悪かったわね。
  もう帰りますよ~って…はぁ!?」


 突然かけられた声を聞き後ろを振り返る


 「どれだけ待たせれば気が済むのだ。
  儂はずっと退屈だったぞ!」


 耳と尻尾を生やした犬神が祠の近くで
 不機嫌そうに座っていた


 「待たせればって…毎日は来れないよ。」


 「ええい!人の癖に生意気ぞ!」


 尻尾の毛を逆立てている


 「うわっ!ごめんなさい…。」


 大声を出しているが尻尾が本当の
 犬のようなので迫力が余りない


 「ふんふん…。む!この甘い香りは
  何だ?」


 「あ!え~っと、お詫びにスイーツ
  買ったの。クリームコロネ。」


 私はケーキ屋で買ったコロネを犬神に
 差し出した


 「クリームコロネ?食べて良いのか?」


 「うん、いいよ。」


 犬神は匂いを嗅ぐと、おそるおそる
 一口食べた


 「どうかな?」