40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで

目の前の女の子が、ヨーヨーすくいと同じようなやり方で、真っ赤な鯛を釣っていた。
その横で、彼氏らしき男の子が女の子の写真を撮ってあげていたのが、とても微笑ましかった。

「森山さんやります?」
「そうですね」

私も、赤い鯛を釣ろうと糸をたらした。
その時、ふと、その横にピンクの鯛がたくさん置かれている台があるのを見つけた。
近づいてみると、ピンクの鯛は恋みくじと、書いてあった。

(私なんかが釣るとか……ギャグにしかならないな)

赤い、普通のおみくじの鯛を釣ろう。
そう思って、釣り糸を垂らしたところ、氷室さんが私の肩を叩いてきた。

「はい」

氷室さんは、私にピンクの鯛を渡した。

「どうして……」
「欲しそうな顔をしていた気がしたので」
「そんな顔してましたか!?」
「先ほど食べたさつま芋のお菓子を見る時の顔と、同じ顔をしていました」

(……どんだけ物欲しそうにしていたんだ私は……!)

「あ、待って」

氷室さんが、私の手の上においたピンクの鯛をもう1度掴みながら

「俺、失念してましたが……自分で選ばないとおみくじになりませんよね」

(言われてみればそうだ)

「戻しますね」
「待ってください!」

私は氷室さんを引き留めた。

「これに、します」
「ご自分で選ばなくて良いんですか?」
「はい!」

私はそのまま氷室さんの手から、ピンクの鯛を選び、中のおみくじを開けてみた。

【未来に幸福あり】

おみくじに書かれていた言葉に、心が踊った。

(そうだ、氷室さんにお礼を言わなきゃ)

私は顔を上げると、そこにいたはずの氷室さんが居なくなっていた。

(あれ、どこにいるんだろう?)

少し周囲を見渡すだけで、すぐに氷室さんは、見つかった。
何故なら、浴衣を着た美人な女の子達数名に囲まれて、境内の中でより目立っていたから。