40歳88キロの私が、クールな天才医師と最高の溺愛家族を作るまで

(そうだ……雑誌でも読んでようかな……)

取り出したのは、普段私が買わないような雑誌。
風鈴と浴衣の女性の写真で作られた表紙が綺麗だと思い、つい手に取ってしまった。
その雑誌では、川越の神社で行われているという、風鈴祭りの特集が組まれていた。
記事によると、縁結びで有名なそのお祭りには

【天の川に恋の願いが届くように】

という願いが込められていらしい。

「綺麗だなぁ……」

雑誌に写っている写真は、男女のカップルや女子グループの写真が多い。
男女であれば、縁がますます繋がりますようにという想いがあるのだろう。
女子同士であれば、これからやってくる縁を引き寄せたいという願いがあるのだろう。
もちろん、雑誌だからこそ美男美女揃いではあるのだが……。

そんな事を考えていると、

「お待たせしました、森山さん」

急いでやってきたのか、汗だくな氷室さんが走ってきた。

「まさか走ってきたんですか!?早く座ってください!すみません、飲み物……頼んでおけば良かったですね」

私は、偶然口をつけてなかったお冷を渡しながら、氷室さんに座るのを促した。

「いえ、大丈夫です……。森山さんをお待たせしてしまうのは申し訳ないので」
「そんなそんな、私なんて……置物みたいなものだと思っていただければ」

そんなことを言っていると、氷室さんがソファに座りながら、私が見ているページに気づいたらしく

「お祭りの特集ですか?」

と話しかけてきた。

「はい。川越のです。縁結びで有名みたいですよ」
「いつやってるんですか?」

氷室さんが、さっとページを眺めながらスマホを確認した。

「ああ……もうすぐ終わってしまうか……」
「そうみたいですね」

話は、それで終わると思っていた。
このタイミングで店員さんが来て、氷室さんはアイスティーを注文した。
そこからは、いつものように、友達としての、仕事を労い、趣味を語る……そんなたわいもない……だけど私からすれば、拝みたくなるほどありがたい……おしゃべりの時間が始まると思った。
ところが。

「いつがいいですか?」
「……いつが良い……とは?」

私が首をかしげた。
すると、氷室さんから意味不明な言葉が発せられた。

「そろそろ特別な日になると思いますので……」