マオ・ミラー、享年41歳が最期にした選択は、それからの俺の人生を大きく狂わせた。

隠し子が発覚した俺は家の評判を落とすと、俺は氷室家を追い出された。
俺の代わりに、弟が後継になった。
氷室家は、医学界ではよく知られた家。
だから、そんな家から追い出された、氷室の名を持つ俺を雇ってくれる病院はなかった。
そんな俺に、開業を選択するようにアドバイスをしてくれたのも、ケビンだった。
氷室の家を継ぐ以外の、全く想像したこともない未来だったが……もう……俺は疲れてしまっていた。

自分以外の人間の選択が、どうせ自分に作用してしまうならば。
やはり自分は何も選択しない方がいい。

「お前が選ぶことはもうない」
「お前は、ただ求められたら答えればいい」

それを、俺の人生の軸にした。
そして、ぬるま湯に浸かったような、穏やかな日々を手に入れた。
それで良いと思ってしまったはずなのに……。

運命は、俺の目の前に優花を連れてきてしまった。