翌朝目を覚ましてみると、珍しく隣でまだ晋太郎さんが寝ていた。

たいてい私より早く起きて奥の部屋に戻っているのに。

その姿に私はまだ見慣れていないし、違和感もある。

起こさないようにと、そっと立ち上がったつもりだったのに、その人はパチリと目を開いた。

「お待ちなさい」

ふいに呼び止められて、ビクリとなる。

「今日の用事が済んだら、奥のお部屋においでなさい」

驚いて見上げる。

それでもこの人は、それだけを言い残してさっさと出て行ってしまった。

あの人はいつも、着替えとか髷とか朝の身支度を、どこでしているのだろう。

奥の部屋で、全部一人で済ましているのだろうか。

ではあの箪笥には、全て晋太郎さんの物が入ってる? 

だから見られるのを嫌がったのかしら。

それでも大人の男の人が、あれほどの衣装を役者でもないのにそろえているとは思えない。

なにか他に見られたくないものでも、隠しているのかな。

昼までの時間をやり過ごすのに、こんなにも苦労するとは思わなかった。

平常心を装うとしても、なかなかに難しい。

お義母さまに相談してみようかとも思ったけれど、晋太郎さんからまだ何の話しも聞いていないのに、どう相談するのかも分からない。

それで余計なことを言ってしまって、もし晋太郎さんの気に障るような話しをお義母さまから聞いてしまったら、その方が自分の気持ちを保てそうにない。

あの人に何を言われるのだろうと思うと、まだ少し怖くもある。

間違いなくそわそわしているのに、何も聞いてこないお義母さまもお義母さまだとは思う。

助けを求めるように見上げても、それに気づいているのか、気づかぬフリをしているのやら……。

早く会いに行きたいのか行きたくないのか、引き延ばせるだけ引き延ばしていたいつもの仕事が、ついに全部終わってしまった。

手の空いてしまった以上、あまり遅くなってもあの人と顔を合わせにくい。

覚悟を決めた。