「ふふっ、なんかいつもと逆だね」
「なにが」
「いつも私ばっかり余裕なくて、はずかしいから、こんな渚見れて、すっごくうれしい……」
「ほんと、勘弁して……」
ふいっと顔を背けて片手で顔を覆う。
両手で隠すことだってできるのに、もう片方は私を抱きしめたまま離さないから、いくら照れてたって、やっぱり渚には敵わない。
「渚」
「なに?」
「帰ったら、いっぱいキスしてほしいな……」
「……おまえさ、自分でなにいってるか、わかってる?」
「うん……その……フォークダンスで他の男子と手つなぐかもしれないでしょ?はやくこの体質をせんぶ受け入れたいから」
ダンス練習は明後日からだから。
はやく、はやくこの体質を克服したい。
特訓、してほしい……。
「そっちかよ……」
「え?」
「純粋に俺とキスしたくて、むぎからしてって言ってるのかと思った」
「えっ!?あっ、そ、それは……」
特訓は、もちろんだけど……。
少し不機嫌な声が落ちてきて慌てて首をふる。
「俺とキスするのは特訓だけ?」
「ち、ちがうっ、」
「どう、ちがう?」
「渚を好きだから……」
「うん」
「渚をもっと、肌で感じたいから、キス、してほしい……」
一番は渚にふれてほしいから。
変わっていく。
渚にふれられるたびにどんどん貪欲になっていく自分。
知らなかった。
自分がこんなに欲張りだったんだって。
「はぁ……ったく、」
「っ、ひゃあっ!?」
いっ、いま……!
「ど、どこさわってるの!?」
「んー、どこだと思う?」
「っ、ぅ……」
シャツの上から、ゆっくりゆっくり。
背中、脇腹、腰、太もも。
体のラインを焦らすようにさわられて、ぎゅっと目をつぶる。



