「あ……ありが……」

「永田さん、帽子ない方がいいよ」


わたしを見上げて、雨夜くんが笑う。

天から降る陽光が、完璧な笑顔をよりいっそうキラキラさせる。


「永田さんは……可愛いよ」

「……っ」


何度目かの反呪文をもらった瞬間、また一気に、多量の涙があふれてしまった。


……強くなりたい。

ひっくひっくと肩を上下させながら、そう思った。


前からずっと胸にあった願い。でも今、心の真っ芯から思った。決意した。


わたし……強くなりたい。もっともっと強くなるんだ。

後ろを見そうになっても踏ん張ろう。なりたい自分になるために、行動しよう。


涙は、なかなか止まってくれなかった。

視界はぼやけてにじんで、輪郭がとらえられるくらいで。視力はきっと、0.1以下。


だから……わからなかった。

雨夜くんが、光を失った目でどこか遠くを見ていたことに。


ちっとも知らなかった。

完璧な雨夜くんが、薄暗く複雑な気持ちを、抱えているということを。