その鳥屋さんと目が合う。くっきりとした猫目に睨みつけられ、背中があわだつ。

悪口なんて、言った記憶は微塵もない。言おうと思ったことすらないのに。


『え……し、知らない!わたし悪口なんて言ってない!』

『ウソつかないでよ!美和に聞いたんだから』


……え?

心に冷たい、零度以下の氷が落ちてきたようだった。

驚愕に目を見開き、美和の方を見る。すると不自然なまでに首を回して、視線をそらされてしまって。


『美和……なに、どういう――』

『温美が悪口言ってたんだよね? 美和?』


わけがわからなくて上ずるわたしの声に、鳥屋さんの冷たい声がかぶさる。


『わたしのこと、男に媚びてるーって。温美が言ってたんだよね?』

『……うん』


わたしと目を合わせないまま、うなずく美和。


『……言ってた』

『……っ』


そのセリフを、聞いたとき。

足元が崩れたようだった。 バラバラと、積み重ねたものが壊れていく音がした。


親友であるはずの美和が、まるで知らない人に見えた。どうして? 美和。

どうしてそんなウソをつくの。どうして……?