そのあとしばらくしてから阿形先生が教室に来て、朝のSHRが行われた。

注意事項などの再確認を経て、いよいよ文化祭開始の流れになる。


「じゃあ、各自楽しんでくるように!」


先生のひと言で、ワッと教室外に排出されるクラスメートたち。心躍っているせいか、みんながみんな早足だ。


……よし、行こう。

スリーテンポほど遅れて、わたしもイスからお尻を上げた。


たこ焼き、クレープ、劇。それらのどれにも足を向かわせることなく、わたしはある場所に直行する。

北館二階の、空き教室だ。


文化祭の日から逃れることはできない。

だからわたしは前もって、隠れられる場所を必死になって探しておいた。


校舎の中で、ゆいいつ建て替えをされていない古い北館。

北館には出店がひとつも予定されていない上、二階の空き教室はカギが壊れているから、入り込むことができると判明したんだ。


……時間をやり過ごせる場所が見つかって、本当によかったな。

北館の少しひんやりした空気の中に足を踏み入れながら、わたしは薄く息を吐いた。


人の気配がある本館には、いられない。

いじめっ子たちも同じ空間にいるかもと想像したら、胃液がせり上がってくる感じがする。

もし、遭遇してしまったら。彼女たちは、わたしに向かってなんて言うかな。