◇
美和と別れたあと。
しばらく喫茶店の前に立っていたわたしは、やがて大きく息を吸ってから、歩き出した。
うつむくとは真逆。首を真っすぐに正して、空気を切って歩く。
頭上に広がるのは、突き抜けるような青空で。どこかスッキリした気持ちだった。
もちろんまだ、汚くて複雑な感情は捨てきれない。
でも息苦しかった薄皮を一枚脱げたような。そんな感じで。
しっかりと胸を張る。またスウッと息を吸い込み、肺をふくらませて、大地を踏みしめるように歩いていく。
家にはまだ、帰らない。
わたしがこれから向かう場所は、常和高校の図書室だ。
お互いに頑張り終えたら、図書室で落ち合おう……って。雨夜くんと電話で、そう約束しているから。
本来なら、夏休みに入っている今日は、図書室は施錠されている。
でもわたしは、顧問である阿形先生に、カギのレンタルをお願いしていた。
どうしても調べ物がしたいから……なんて、一生徒が無茶な頼みだ。
なのに阿形先生は、すんなり了承してくれた。
『ふうん。ま、永田なら悪いようには使わないだろ』
……大人しくて地味なことが、役立つ場面もあるものだ。
美和と別れたあと。
しばらく喫茶店の前に立っていたわたしは、やがて大きく息を吸ってから、歩き出した。
うつむくとは真逆。首を真っすぐに正して、空気を切って歩く。
頭上に広がるのは、突き抜けるような青空で。どこかスッキリした気持ちだった。
もちろんまだ、汚くて複雑な感情は捨てきれない。
でも息苦しかった薄皮を一枚脱げたような。そんな感じで。
しっかりと胸を張る。またスウッと息を吸い込み、肺をふくらませて、大地を踏みしめるように歩いていく。
家にはまだ、帰らない。
わたしがこれから向かう場所は、常和高校の図書室だ。
お互いに頑張り終えたら、図書室で落ち合おう……って。雨夜くんと電話で、そう約束しているから。
本来なら、夏休みに入っている今日は、図書室は施錠されている。
でもわたしは、顧問である阿形先生に、カギのレンタルをお願いしていた。
どうしても調べ物がしたいから……なんて、一生徒が無茶な頼みだ。
なのに阿形先生は、すんなり了承してくれた。
『ふうん。ま、永田なら悪いようには使わないだろ』
……大人しくて地味なことが、役立つ場面もあるものだ。


