昼と夜の間で、僕らは手をつなぎ合う



美和と別れたあと。

しばらく喫茶店の前に立っていたわたしは、やがて大きく息を吸ってから、歩き出した。


うつむくとは真逆。首を真っすぐに正して、空気を切って歩く。

頭上に広がるのは、突き抜けるような青空で。どこかスッキリした気持ちだった。


もちろんまだ、汚くて複雑な感情は捨てきれない。

でも息苦しかった薄皮を一枚脱げたような。そんな感じで。


しっかりと胸を張る。またスウッと息を吸い込み、肺をふくらませて、大地を踏みしめるように歩いていく。


家にはまだ、帰らない。

わたしがこれから向かう場所は、常和高校の図書室だ。


お互いに頑張り終えたら、図書室で落ち合おう……って。雨夜くんと電話で、そう約束しているから。


本来なら、夏休みに入っている今日は、図書室は施錠されている。

でもわたしは、顧問である阿形先生に、カギのレンタルをお願いしていた。


どうしても調べ物がしたいから……なんて、一生徒が無茶な頼みだ。

なのに阿形先生は、すんなり了承してくれた。


『ふうん。ま、永田なら悪いようには使わないだろ』


……大人しくて地味なことが、役立つ場面もあるものだ。