「……っ」
混乱のさなか。母親と、ばちりと目が合った。
息を止めた。まるで幼いころに戻ったみたいに、とても不安定な気持ちになる。
つかまる場所もなく、海を漂っている頼りなさ。意図せず、また拳を握ってしまう。
母親はじっと、俺を見ていた。母親の瞳の中に、俺がうつり込んでいる。
瞳の様子は、徐々に変わっていく。
少女の目に、大人びた光が宿って……そして。
「……りょう」
母親の口から、俺の名前がすべり出た。
「……え」
ぶわっと、全身に鳥肌が立った。
ふるえるくちびる。いろんな箇所が熱くなる。
メニュー