「鳥の親子、可愛いわねぇ。ねえあなた、子どもはいるの?」
ふわふわとした声で、俺にたずねてくる母親。
悲しくて、笑いそうになった。十六の俺が、子どもを持てるように見えているのか。
目の前にいる人間がいくつくらいか、そんな判断をすることもできなくなっているのか。
落胆しながら、いないと答えようとしたときだった。
「わたしは、いるの」
鳥を見つめながら、ぽつりと、母親が言った。
「……え」
「小さい子。五歳の、男の子」
「……!」
その言葉を聞いた瞬間、ぐらりと地面が揺れたかのようになって、心臓がバクバクはじけはじめた。
まさか、俺のこと?いやでもこの人は、もう全部忘れている。
だって、名前を言ってもわからなかったじゃないか。この人の中に、捨ててきた息子の記憶なんて、あるはずがーー。


