母親の視線の先を見てみると、芝生に二羽の鳥が降り立っていた。
二羽はそれぞれサイズが違う。片方はひとまわり小さめだ。
「親子かしら?」
嬉しそうな、少女の声で母親が言う。
さあ、という言葉も出なかった。二匹の鳥たちは、寄り添い、チュンチュンと鳴き合っている。
ちょっとした仕草から、小さいほうが大きいほうに信頼を寄せているように見えるから、本当に親子なのかもしれない。
あるべき親子の姿。俺はそれを、得られなかった。
母親にとって、俺はいらない存在だった。
昔も……それから今も。いらないからこそ、母親は忘れてしまったのかもしれない。
必要ないから、俺に関する記憶を、捨ててしまったのだ。


