今日俺は、ものすごい決意をもってここに来た。
黒く煮詰まり続けた思いを成仏させられるなにかが、見つかるんじゃないかって。
なのにこんなの、恨みつらみをぶつけることもかなわない。ぶつけたところで、相手にはみじんも伝わらない。
当時の心境を、向こうから聞くこともできないんだ。
ぎり、と歯を食いしばる。気持ちにどう整理をつけたら、少しは納得できるだろうか。
三十代にして若年性アルツハイマーにかかったことを、あざければいい?
せっかくおだやかな生活を手に入れた矢先に、なにも覚えられない頭になって、いい気味だと思えばいい?
愛されたいばかりで、常に溺れて、虚しい人生だって。ざまあみろって。
「……っ」
そんな風に思えたら……どんなにいいか。
拳を握った、そのときだった。
「……あっ」
母親が、小さな声を上げた。


