なにかしらの反応があるはずだって、そんなふうに思っていた自分を、ひどくバカらしく感じた。
若年生アルツハイマーの人は、年々幼くなるという。
母親は今の年齢ではなく、幼い女の子なのかもしれない。
今目の前にいるのは別人と成り果てた人で、もう母ではないのかもしれない。
絶望を味わっている俺とは別の世界にいるかのように、母親はふんわりとほほえんで言う。
「今日は、いい天気ね。ひまわりに水をやったのに、もう土が乾いてしまって……もっとやったほうがいいの? 腐ってしまうかしら」
なんてのんきな言葉の羅列だ。虚しさを覚えながら、「……俺も、詳しくなくて」と、とりあえずの言葉を返す。
「そう」
またつかみどころのない、ぼんやりした返事が聞こえてくる。
失笑に似た息が漏れた。やるせなかった。


