昼と夜の間で、僕らは手をつなぎ合う


「実母のところに、子どもを置いてきてしまったのに……結局好いていた男性に暴力をふるわられるようになり、追い出されてしまったみたいです。ひとりぼっちになるのは当然のむくいだって、歩美さんは言っていました」

「………」

「ほかにもたくさん、話していました。わたしは大人になりきれない子どもだった。あのころ自分はいっぱいいっぱいで、愛すより圧倒的に愛されたくて、育てていく自信がなくて最低なことをしてしまった……そんな風に」


静かに発される野坂さんの言葉は、俺の中心部を容赦なくえぐっていく。

たくさんたくさん、汚い気持ちが掘り起こされて。でもその中に、母親を軽蔑しきれない気持ちも生まれる。


彼女は彼女なりに、必死に生きるすべを探していたのだと……そんな気持ちが。


「長々と話してしまってすみません……涼さん」


野坂さんの低音の声が、混乱している俺を、ハッと今の状況に引き戻す。


「いえ……」

「おばあさんにはお話しましたが……歩美さんは、なにも覚えていません。わたしのことも、わかっているのかどうか……」


そう言って寂しそうに笑うと、野坂さんは立ち上がった。

そしてはじめて、視線をレースカーテンのほうへと向ける。


「歩美さんは……その掃き出し窓を出たところの、庭にいます。庭にはテーブルとイスが置いてありますし、日除けのシェルターがあるので……ゆっくり話してください。わたしは二階におりますので」