そこからはお互い、言葉はなしに、ただただ泣いた。
泣きながら、メロンソーダとコーヒーを吸い上げた。
たくさんたくさん、涙を流した。切ないとか悲しいとか、なにかひとつの感情からくる涙じゃない。
言い表せない、たくさんの感情が混じって生み出される涙だ。
メロンソーダとコーヒー。両方が空になったところで、わたしたちは席を立った。
「……今日は、ありがとう」
お金を払って店を出たあと、美和はわたしに頭を下げた。
「えっと……じゃあ」
「……うん」
まだなにか言いたげに、けれどつばを飲み下して、ぎこちなくきびすを返す美和。
目にうつる、美和の後ろ姿。揺れるポニーテール。
春を思い起こさせる、くるんとした軽やかな毛先。そして……その根元には。
「~美和!」
思わず、呼び止めた。
美和が、はじかれたように振り返る。
「それ……」
熱い息とともに、わたしは美和に問いかける。
「それ、頭についてるやつって……」
「……うん」
美和が、泣いたばかりの顔でほほえむ。
懐かしさがこみ上げた。そうだ。美和はよく、こんな風にわたしにほほえみかけていた。
「温美が、くれたやつだよ」
美和の頭には、わたしが誕生日プレゼントとして贈ったヘアゴムが、輝いていた。


