美和の目から、涙がこぼれた。
ごめんなさい、と小さくつぶやいて、美和は吐露を続けた。
「温美はずるいから……だから、少し痛い目をみればいいって。そんな汚い気持ちで、ウソを流した。そうしたら……想像以上に、おおごとになって……本格的ないじめに、なってしまって……それで、どうしようって……どうにかしなきゃって思って……っ、思ったけど……今更、ウソだなんて言えなかった……っ」
美和の言葉が、まるでかたちを有しているかのように、わたしの心にぶつかってくる。
思いが複雑にこんがらがって、言うべきことがなにも出てこない。
「でも……因果報応ってあるんだね」
固まっているわたしを前に、美和は自分をあざけるように言った。
「それからお母さん……本格的に、家に帰ってこなくなったの。わたしはほぼ放置で、それで……おばあちゃんの家に、行くことになった。だから中三で引っ越して……でも、その転校先で、いじめられたの」
「……!」
「うまく馴染めなかったし……母親に捨てられた、みたいなウワサがすぐに立って。いじめられて、学校に行けなくなって……それで、出席日数が足りなくて。だから、常和の夜間に通うことになったんだ」
わたしが正面に座ってから、ずっとうつむいたり、どこかわからない虚空を見たりしていた美和。
だけれど、ここではじめて、真っすぐこちらを見た。
「わたし……」
ふるえながら、それでもそらさずに……わたしに、向き合った。


