「文化祭のとき、夜間生も来るって聞いたー?」
えっ、と目を見開き、耳をうたがった。
夜間生が……来る?
「は、夜間生?」
「うん。出し物はしないけど、お客さんとして来るんだって。出欠取られるから、強制みたいだよー」
「うわ、最悪。夜間生ってケタ違いの不良ばっかなのに、治安悪いじゃん」
「だよねー。トラブルになったらどうすんのって感じ」
……うそ。
ぽろり、と。指の力が抜けて、まるで漫画のひとコマみたいに、おはしを落としてしまっていた。
おはしが床に転がった音が聞こえたけれど、手は伸びない。体がフリーズして、動かない。
参加がほぼ強制……って、ことは。
固まったまま、頭の中で、聞こえてきた会話を整理する。
つまり雨夜くんも、文化祭に来るってことだ。
昼と夜、じゃない。ふたりとも同じ時間に、同じ場所にいるということ。
じゃあもし……せっかくの機会だからと、雨夜くんがわたしを探してくれたとしたら?
ううん。その前に文章で【文化祭で会わないか】と誘われたりしたら?
わたしがこんなコミュ障人間だと、ブスって言われるような外見をしていると、知られてしまったら。
がっかりされたら。コイツかよって、顔をゆがめられたら。
「……っ」
なにかとがったもので、心臓をひと突きされたようだった。
昨日からずっと頭を回っていた〝どうしよう〟の答えを、わたしは今、強制的に得てしまった。