それでも自分を鼓舞して、わたしは美和から視線をそらさずに、席まで歩いた。
「あ、あの……」
目の前に来たわたしに対し、しどろもどろの美和。
テーブルの上には、アイスの溶けかけたメロンソーダがのっている。
「ご、ごめん。先に注文しちゃって……あの、席とるには注文しなきゃならないって、言われたから……」
「……うん」
美和の言葉にうなずき、わたしは手を挙げて店員さんを呼ぶ。
そしてブラックコーヒーを注文したのち、やっと美和の前に座った。
「………」
「………」
ふたりの間に、横たわる沈黙。
必死に意識して、顔を上げたままでいる。そんなわたしの正面で、美和は肩を丸めてじっとうつむいている。
夜間の教室前で偶然遭遇したとき、わたしはパニックに陥って逃げ出してしまった。
だからじっくり美和を見るのは、一年数ヶ月ぶりだ。


