自分では強気でいられているつもりだけれど、本音のところでは、完全に恐怖をぬぐえていないみたいだ。
このドアをくぐったら、もうその先には、美和が来ているかもしれない。
ずっとずっと、数え切れないほど、どうして?と問いかけて。憎んで、恨んで、苦しまされてきた相手。
何度も黒い気持ちを抱くうちに、美和という存在を、実物よりももっとおそろしいものとして感じてしまっているのだと思う。
……大丈夫。頑張るって、決意したんだ。
自分にもう一度言い聞かせたあと。わたしは自分を奮い立たせて、ドアノブを回した。
中に入って、一拍置いてから顔を上げる。
窓際の奥の席。わたしの目は、すぐに美和の姿をとらえた。
「あ……!」
美和もすぐにこちらに気づいて、声を上げて立ち上がる。
重なり合った視線。心臓にズクン、と石を投げ落とされたような痛みを感じた。
気管の幅がせばまり、空気が上手く通らなくなっていく。


