雨夜くんの瞳が揺れる。瞳にうつる、わたしも揺れる。
「救う……こと……?」
「……うん」
ゆっくりとうなずく。くちびるを一度噛んで、真っすぐ雨夜くんを見る。
「あの……あのね。これはわたしの、意見だけど……」
きっと今、わたしの瞳の中でも、雨夜くんが揺れている。
「雨夜くんのお母さんがしたことは……許されることじゃ、ないと思うよ。許さなくていいって、思う」
「……っ」
「でも……でもね。今を逃したら、許さないっていう選択肢しかなくなっちゃう。強制的に、それしか残らなくなっちゃう……!憎むことにとらわれて向き合わないことで、雨夜くんがずっと苦しい気持ちを引きずるのだけはね、嫌なんだよ……っ」
雨夜くんの瞳だけでなく、口元まで崩れ出す。
泣く手前の状態の雨夜くんが、そこにいる。
「わたしたち……っ、自分のために、過去に向き合えないかな……?」
息を吸って、肺を酸素でいっぱいにして。
自分にも聞かせるように、わたしは続けた。


